2008年6月4日
岩森 光 氏 (東京大学・理・地球惑星科学)
地球内部の物質分化・循環と進化
近年、情報科学分野で発達してきた「独立成分分析」の概念と手法を用いて、海嶺玄武岩(MORB)と海洋 島玄武岩(OIB)の同位体組成空間の解析を行った結果、新たな構造と2つの独立成分(IC1とIC2)が見い出された(Iwamori and Albarede, 2008)。これらの玄武岩の同位体比(Pb, Sr, Nd, Hf) からなる組成空間は、たかだか2つの独立成分(ベクトル)によって張られること、および独立成分空間においては、データ分布が homogeneous joint distribution に近い構造をもつことなどが明らかとなった。この結果は、マントルの同位体比不均質が、数多くの「端成分」(DMM, EM, FOZO/C, HIMUなど)の相互作用によって形成されているのではなく、2つの元素分別プロセスが相互にプロセッシングしあうことによって形成されていることを示している。どのようなプロセスであるのか、どのような対流・物質循環を意味するのかを議論し、それらに基づいて地球内部のダイナミクスおよび形成・進化のシナリオを描く。