2008年7月2日

内出 崇彦 氏 (地球惑星科学専攻・博士課程)

「地震の破壊成長についてのスケーリング則」

地震は準静的な破壊核形成過程から始まると考えられているが、 それに続く高速破壊がどのように成長するのか知ることは、地震学上の 重要な問題である。今回の発表では、カリフォルニア州 Parkfield 地域 で発生した中小の地震 (M2〜M6) の破壊過程を詳細に調べた結果を示し、 比較する。

比較に際しては、モーメント時間関数を用いる。これは、破壊開始から ある時刻までの累積モーメントであり、モーメントレート関数の時間 積分である。幾何学的に自己相似な破壊過程を考えれば、これは時間の 3乗で増加する。

2004年の Mw 6 の地震のモーメント時間関数は、破壊開始後1秒頃まで、 概ね時間の3乗で成長したが、その後、この「3乗成長」から外れて、より 緩やかに成長するようになる。これは、地震発生層の厚みが影響したの かもしれない。破壊開始後10秒ごろには破壊が停止するが、その直前には モーメント時間関数の成長も更に緩やかになる。

より小さい地震では時間分解能の限界もあるが、モーメントの成長は初め、 時間の3乗に比例する同一の線に乗り、その後、勢いを失って停止する 様子が見られる。

こうした結果から、地震は共通の破壊成長曲線を描くことが示唆される。 この仮説に基づいて、博士論文執筆に向けての研究の方針を示す。