固体フォーラム10月の予定

10月31日(火)16:00 – 18:00
理学部1号館710室

修士論文中間発表2

16:30 – 17:00
池永 有弥 『伊豆大島安永噴火の推移とマグマシステム』

17:00 – 17:30
甲斐 建 『独立成分分析を用いた火山性地殻変動抽出の試み』

17:30 – 18:00
高橋 大和 『N型火山性地震の自動検出手法の検討とその応用』

要旨は末尾参照


10月24日(火)16:00 – 18:05
理学部1号館710室

修士論文中間発表1

16:00 – 16:30
麻生 未季
パークフィールドにおける低周波地震の震源メカニズムの推定と地震活動

16:30 – 17:00
植村 堪介

17:05 – 17:35
金子 りさ
紀伊半島沖における脈動帯(0.1-2Hz)でのスロー地震

17:35 – 18:05
鈴木 杏平

要旨は末尾参照


要旨

発表者:池永有弥 さん

タイトル:伊豆大島安永噴火の推移とマグマシステム

要旨:玄武岩質の低粘性マグマを噴出する火山では一般的に穏やかな噴火が起こりやすいと認識されているが、富士山の1707年宝永プリニー式噴火など爆発的噴火が発生することもある。しかし玄武岩質の火山における爆発的噴火の報告例は少なく、十分な研究がなされていないのが現状である。このような爆発的噴火を頻繁に起こしてきた火山の1つに、日本を代表する玄武岩質の活火山である伊豆大島火山がある。伊豆大島では大規模な爆発的噴火がこれまで約100-150年周期で頻繁に起こってきた(Nakamura 1964)が、最後の大規模な爆発的噴火である1777年の安永噴火以来240年以上にわたって大規模噴火が発生しておらず、近い将来同様の噴火が発生する可能性は否定できない。これらを踏まえ、伊豆大島における過去の大規模な噴火の推移やメカニズムを詳細に調べることは火山学的・防災的に重要であると言える. 本研究では安永噴火の噴火期間のうち、最盛期であるスコリアと溶岩の噴出期を対象として, 噴火推移とマグマシステムの解明を試みた.その結果、スコリア・溶岩噴出期の終盤で噴火が最盛期を迎えたことや、噴出時期によって斜長石斑晶量をはじめとしたスコリアの特徴が顕著に変化していることがわかってきた。今回の発表ではこれらの詳細および今後の方針について述べる。

発表者:甲斐建 さん

タイトル:独立成分分析を用いた火山性地殻変動抽出の試み

要旨:西南九州に位置する霧島山新燃岳火山は、2011年に総放出量2.1-2.7×10^7 m^3 DREの噴火を起こした(Nakada et al., 2013)。新燃岳地下のSV波の速度構造の解析からは、海抜下10-15km付近に大規模な低速度領域が存在することがわかっており、マグマ溜まりであると考えられている(長岡, 2018)。また、霧島山の震源分布の解析から、低速度領域の下部、海抜下20-25km付近に深部低周波地震の震源が存在するため、地下からのマグマの供給が地震学的な視点から示唆されている。一方、噴火に先行するGNSS時系列トレンドの変化が、2006年以降から観測されており、地下の火山活動の変化が測地学的な視点から示唆されている。しかしながら、火山地域のGNSS観測データには、潮汐の年周変化、地震、及びテクトニックなプレート運動などの火山活動以外の寄与も含まれている。したがって、火山活動を議論する上ではそれらの寄与を取り除く必要がある。そこで本研究では、多変量統計解析を用いて火山活動以外の寄与を取り除き、火山活動に起因すると思われる時系列を抽出することを試みている。本発表では、統計解析手法の一つである、独立成分分析の概要及び、GNSSデータに発生する欠測の処理の手法について紹介し、今後の研究の方針について述べる。

発表者:麻生未季 さん

タイトル:パークフィールドにおける低周波地震の震源メカニズムの推定と地震活動

要旨:テクトニックな低周波地震は世界中のプレート境界で発生しており、その地域のスローな変形だと捉えられている。それゆえ、低周波地震の震源メカニズムはプレート運動に整合的であることが期待される。実際、西南日本をはじめ、メキシコやカスケードなどの沈み込み帯では、低角逆断層型[Ide et al., 2007; Royer and Bostock 2014; Frank et al.,2013]、ニュージーランドの横ずれアルパイン断層では、右横ずれ断層型[Baratin et al., 2018]の解が得られている。しかしながら、多数の低周波地震が観測されているにも関わらず、地震波形のS/N比が低いサンアンドレアス断層沿いのパークフィールド地域では、低周波地震の震源メカニズムは明らかになっていない。そこで、本研究ではShelly (2017)のカタログにまとめられたパークフィールド周辺の88種類の低周波地震約114万イベントを対象として、それらを取り囲む131観測点の地震波形のS/N比を向上させ、震源メカニズム解の推定を目指す。また、波形振幅情報から得られた個々の地震の大きさに着目した活動解析についても紹介する。

発表者:金子りさ さん

タイトル:紀伊半島沖における脈動帯(0.1-2Hz)でのスロー地震

要旨:スロー地震は微動・超低周波地震(VLF)・SSEなどに分けることができ、これらは異なる周波数帯で観測されている。一方、例えば0.1-2Hzのような周波数帯においては、地球の微動が支配的となるために地下でのゆっくりとした変動を観測することが困難であり、その存在は確かめられていなかった。しかしながら、2016年4月1日に紀伊半島沖で発生したMw5.9のプレート境界型の地震の後、DONET海底地震計において、脈動帯において十分に大きなシグナルが観測され、微動やVLFイベントやSSEも同時に観測された。そこで、本研究では、脈動帯においてイベントの特定と震源決定を行い、2Hz以上の微動やVLFイベントとの時間的・空間な分布をエンベロープ相関法を用いて比較した。その結果、スロー地震により脈動帯でも地震波の放出があること、各周波数帯での震源が一致するイベントがあったことがわかった。これにより、スロー地震は脈動帯も含む連続的な広帯域にわたる複雑な現象であると結論づけることができるだろう。