固体地球フォーラム 博士論文中間発表 Student’s interim presentation

6 月 26 日(水)@ Room 710

  1. 16:00 – 17:00 鈴木 裕輝(地球惑星科学専攻 博士課程)
    3D anisotropic structure in D″ beneath the Northern Pacific inferred by waveform inversion: Constraints on mineralogy and flow in the lowermost mantle
  2. 17:00 – 18:00 本馬 佳賢(地球惑星科学専攻 博士課程)
    Thermal state of the upper mantle and the origin of the Cambrian-Ordovician ophiolite pulse: constraints from the Hayachine-Miyamori Ophiolite

6月12日(水) @ Room 710

  1. 16:00 – 17:00 田川 翔(地球惑星科学専攻 博士課程)
    Hydrogen in the core? -Metal-silicate partitioning of hydrogen under the conditions of Earth’s core formation-
  2. 17:00 – 18:00 木村 皐史(地球惑星科学専攻 博士課程)
    パラサイト隕石のHf-W年代学


Abstract

田川 翔
Hydrogen in the core? -Metal-silicate partitioning of hydrogen under the conditions of Earth’s core formation-
地球の中心核は、純鉄の密度より、外核で約10%、内核で約3%、軽いことが知られている。この「核の密度欠損」は、中心核に鉄、ニッケルに加えて、軽元素が固溶しているためであるが、軽元素の種類が何であるかは、60年来の未解決問題であった。これまで、Si、S、O、C、Hなどの軽元素が提案され、超高圧・高温実験が行われている。近年、この中で、水素が注目を集めている。その理由として、次が挙げられる。1. 惑星形成理論において、大量の水が初期地球にもたらされている可能性があること。2. 水素は鉄の融点を大きく下げるため、最下部マントルの低い融点を説明する上で最も整合的である元素であること。3. 鉄-水素系の高温高圧下での圧縮挙動・弾性波速度は、外核・内核の地震波観測結果に整合的であること。残された課題は、地球の中心核が形成されたとされる条件(すなわち、50万気圧、3500 K、fO2 =⊿IW-2)において、水素が中心核とマントルへどのような比率で分配されるかを明らかにすることである。水素のメタル-シリケイト間の分配実験の先行研究はあるものの、温度・圧力条件とも低く、さらには、分析手法の正しさに疑問が持たれていた。今回、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルによる超高温・高圧発生を用い、30 – 60 万気圧、3100 – 4600Kにおける、水素のメタル-シリケイト間の分配実験を行った。水素量の決定については新たに実験手法を構築し、大型放射光施設SPring-8におけるメタルの分析と北海道大学の結像型SIMSを用いたシリケイトの分析を組み合わせることで、高精度での分析が可能になった。本実験の結果、超高圧・高温下では水素は親鉄元素として振る舞い、中心核の分離条件における分配係数(DH=Conc.metal/Conc.silicate)は、およそ80となることが明らかになった。この分配係数によれば、コアと平衡に至ったマグマオーシャンの含水量を600 ppm(=表層の1海洋分の水+現マントルにある1海洋分の水がマグマオーシャン中の含水量と仮定。)とすると、中心核の密度欠損の半分が水素に由来すると考えられる。これは、地球初期に現在の海洋の60倍の水がもたらされたことに匹敵する。本研究結果は、近年の高圧下での圧縮挙動・弾性波速度実験と同様に、地球中心核の主要軽元素が水素であることを支持する。中間発表では、上記の分配実験の結果に加え、博論の一部となるFe-H 二成分系相図の構築、Fe-H(-X)系の状態方程式の構築の結果についても紹介する。

本馬 佳賢
パラサイト隕石のHf-W年代学
パラサイト隕石は粗粒なFeNiメタルとカンラン石から成る隕石である。この隕石はIIIAB鉄隕石と成因的な関連性があることや(Clayton & Mayeda, 1996)、非常に遅い冷却速度をFeNiメタルが記録していることから(2.5 – 18 K/Myr @ 975 – 775 K; Yang et al., 2010)、母天体のコアとマントル物質が混合してできた隕石であると考えられている。しかしながら、パラサイト隕石のFeNiメタルとカンラン石がいかに混合されたかにはいまだに議論が多く、惑星分化時の液体コアの対流による混合(e.g. Boesenberg et al., 2012)や、天体衝突によるコアとマントルの混合(e.g. Tarduno et al., 2012)などのシナリオが考えられている。パラサイト隕石に年代学的な制約を与えることは、母天体上でのコア、マントル形成の時期や混合のタイムスケールに制約を与えるという点で重要である。これまでの研究ではパラサイト隕石のカンラン石にモデルAl-Mg年代測定が行われているが(1.24 +0.40/-0.28 Myr; Baker et al., 2012)、メタルの年代学的な制約は未だに与えられていない。そこで本研究ではパラサイト隕石のFeNiメタルにモデルHf-W年代測定を適用することで、パラサイト隕石メタルの形成年代に制約を与えることを目的とした。先行研究におけるパラサイト隕石のW同位体分析では、太陽系最古の物質であるCAIよりも古い年代を示すような低い182W/184W同位体比を持つ隕石の報告がされていた(Quitté et al., 2005)。しかし近年になって、元素合成に起因する太陽系内の元素の不均質や、隕石への宇宙線照射による中性子捕獲反応によってもW同位体比に異常が作られることが知られてきている。本研究ではこれらの影響を評価した上で、4つのパラサイト隕石の初生的なW同位体比を決定した。今回得られたW同位体組成からは、パラサイト隕石母天体では太陽系の形成開始から約2.1 Myr以内にはメタルの分離が起こっていたことが示唆された。この年代がカンラン石のAl-Mgモデル年代と一致する年代を示すことから、パラサイト隕石母天体ではコアの分離とマントルの結晶化が同時期に起こっていたことが示唆され、衝突混合モデルとは非調和的な結果となった。

鈴木 裕輝
3D anisotropic structure in D″ beneath the Northern Pacific inferred by waveform inversion: Constraints on mineralogy and flow in the lowermost mantle
The D″ region is the lowermost several hundred km of the mantle immediately above the core-mantle boundary (CMB) and its base is in contact with the liquid outer core composed of iron alloy. Since the D″ region is the thermal boundary layer (TBL) at the base of the Earth’s mantle, and the solidus of its constituent materials is thought to be close to the mantle geotherm, vertical and lateral variations of temperature and chemical composition associated with the Earth’s thermal evolution are expected. Since chemically and thermally distinct subducted slabs would interact with the hot TBL above the CMB, understanding the thermal and chemical evolution processes of the D″ region under subduction zones is essential to better understand the Earth’s evolution. The D″ region beneath the northern Pacific is of particular geodynamical interest, because the paleo-Izanagi and present Pacific plates have been subducting beneath the northwestern margin of Laurentia since ~250 million years ago (Müller et al. 2016), which implies that paleoslabs could have reached the lowermost mantle. Suzuki et al. (2016) inferred the detailed three-dimensional S-velocity structure in the lowermost 400 km of the mantle beneath the northern Pacific. They hypothesized a prominent sheet-like lateral high-velocity, interpreted as paleoslabs, and a prominent low-velocity anomaly block immediately above the CMB below the high-velocity anomalies, which is interpreted as hot materials in the TBL. In order to verify the above hypothesis and better understand mineralogy and geodynamics, we infer 3D anisotropic structure beneath the northern Pacific in this study. We conduct waveform inversion (e.g., Kawai et al. 2014) to infer the variation of the values of the TI (transverse isotropic) elastic constants L and N related to the shear deformation (Note that L is related to VSV and N is related to VSH only when shear wave propagate horizontally) directly in the lowermost mantle beneath the Northern Pacific, using a total of ~18,000 (~9,000 transverse and ~9,000 radial component) broadband body-wave seismograms. We used deep- and intermediate-focus events recorded at epicentral distances 70˚≤Δ≤100˚ at seismic stations of the USArray. The data are filtered in the period range of 20 to 200 s (i.e. 0.005 to 0.05 Hz) using a Butterworth bandpass filter. By using a time window including S/ScS which is sensitive to the D″ structure we could image small-scale structure with finer resolution than previous studies on global tomography. The observed anisotropy is interpreted as due to deformation-induced alignment of crystal caused by mantle flow for either Mg-perovskite (Mg-Pv), Mg-post-Perovskite (Mg-pPv), Ferro-periclase (Fp) or a combination thereof. In order to relate the flow geometry to the anisotropic geometry, we assume the dominant glide system and elastic constants of each mineral under the lowermost mantle condition based on high pressure experiment and theoretical calculation studies (e.g., Tsujino et al. 2016, Yamazaki et al. 2006 for glide system; Wentzcovich et al. 2006, Karki et al. 1997 for elastic constants). Based on above assumption, the inferred 3D anisotropic structure indicates that the horizontal flow related to subducted paleo-slabs is dominant in this region, and vertical flow related to the plume induced by slab sinking. This implies that the interaction between subducted cold slab and lower mantle plume, and the modality of convection in the lowermost mantle is controlled by tectonics on the Earth’s surface.

木村 皐史
Thermal state of the upper mantle and the origin of the Cambrian-Ordovician ophiolite pulse: constraints from the Hayachine-Miyamori Ophiolite
地球は宇宙空間に内部の熱を放出することで、プレートテクトニクスや火成活動等を推進する巨大な熱機関である。地球の大部分(~80vol%)は熱対流によって表層へ熱を輸送するマントルであるため、その熱的状態の時間的変化およびダイナミクスを明らかにすることは、地球科学において本質的に重要である。マントルの熱状態は内部エントロピーを代表するマントルポテンシャル温度(MPT)で扱われる。地球史におけるMPTの経年変化は、これまで玄武岩の化学組成や単純なparameterized convection modelなどから推定されてきたが、スーパープルームのような数十億年以下の時間スケールの熱イベントついて議論できる時間分解能はなかった。これは従来のMPT推定法では対象の構造場が非島弧に限定されているにも関わらず、島弧性の岩体が地質記録における特定の時期に卓越するためである。そのような岩体の一つにオフィオライトがある。オフィオライトは少なくとも古原生代から近代まで広範にわたって形成されてきたマントル最上部の複合火成岩類であり、その大部分が島弧で形成されたと考えられている。オフィオライトの全球的な形成頻度には、オフィオライトパルスと呼ばれる数億年周期の集中期が認められる。これまでオフィオライトパルスの形成にはスーパープルームのような高温の熱イベントの関与が疑われてきたが、上述のMPT推定法の制限のために定量的な熱状態が得られず、成因不明であった。本研究では、特に島弧型オフィオライトが卓越する顕生代初期オフィオライトパルスに着目し、島弧域に適応可能なMPT推定手法の開発、新手法適応によるマントル熱状態の推定、数千万年スケールでのマントルダイナミクスの推定および当該パルスの成因の推定を行った。当該パルスを構成する早池峰-宮守オフィオライト中の超苦鉄質岩脈は、高圧力下での固結によって初生マグマ中の含水量を保持していることが認められた。その初生マグマ組成から推定された溶融機構と溶融条件は、サブスラブマントルの減圧溶融で~170 km, ~1430 ℃であった。これは顕生代初期の上部マントルの熱状態が現在と近いこと(~1350 ℃)を示唆する。このため、顕生代初期パルスにおけるスーパープルームの関与は、上部マントルに熱的影響を与えないほど小さいと考えられる。また当該オフィオライトのCumulate memberの層序および集積構造を明らかにし、clinopyroxeneのREE濃度から初生マグマの溶融度と溶融深度の時間変化を見積もることで、顕生代初期の東北日本弧においてCumulate Memberとultramafic dikeが形成するまでの数千万年間にスラブ断裂が発生し、対向流によって生じた減圧溶融は深部へと進行して最終的には170kmに到達したことを示した。このようなスラブ断裂に伴ったサブスラブマントルの減圧溶融を示唆するREEパターンは、現代の中央海嶺および背弧玄武岩と比較して、強くHREEが枯渇している。これを踏まえた文献調査を行うと、本特徴は当該パルスを構成する半数以上のオフィオライトに共通することが分かった。よって、顕生代初期オフィオライトパルスの形成メカニズムは、コンパイルされたジルコン年代頻度分布から推定されているゴンドワナ超大陸形成時期を考慮すると、ゴンドワナ超大陸を形成する大陸衝突によって頻発したスラブの断裂、およびそれに続く海洋の閉鎖に伴う最上部マントルの衝上であると考えられる。