高橋 太氏(宇宙研) 地球ダイナモの数値シミュレーション:その現状と今後の展開

2004年4月28日

地磁気は過去数十億年間に渡って維持されていることが知られている。そのような
長期間地球磁場を維持するメカニズムとして考えられているのが地球中心核 (コア)
で起きているダイナモ作用である。鉄とニッケルを主成分とする流体状の外核が磁
場中で対流を起こすことで電磁誘導が生じ、新たな磁場を生成する。その磁場が流
れへのリアクションを与えることで磁場や流れ場は有限な平衡状態に落ち着く。ダ
イナモ問題は電磁流体力学 (MHD) 的なフレームワークによって記述される。
実際の地磁気観測によってコア内部で起きているダイナモプロセスを直接調べる
ことはできないため、数値シミュレーションが唯一の手段として用いられている。
しかしながら、数値シミュレーションにおいて実際のコアの状態を再現するには多
くの困難な課題が存在する。最大の障壁はコアの粘性に起因している。コアの粘性
は非常に小さく、そのために流れのスケールは非常に小さくなる。長さのスケール
はコア半径程度から散逸スケール程度と非常に広い範囲に及ぶので全てのスケール
を表現するには非常に細かい空間解像度が要求される。そのためにこれまでの地球
ダイナモの数値シミュレーションは粘性を桁違いに大きくとって行われてきた。
 実際、非粘性に近い地球のコアの粘性値を用いて数値シミュレーションを直接行
うことは未だに不可能であり、有限の粘性値を用いたシミュレーションによって非
粘性状態への漸近的な遷移を調べることがより現実的なアプローチであろう。本講
演ではそのファーストステップとして行ってきたMHDダイナモの数値シミュレーシ
ョンの結果を紹介する。コア内の対流構造と磁場生成のメカニズム、及びその時間
変動例を示し、更にダイナモシミュレーションの今後の課題と展開についてもコメ
ントしたい。