博士論文中間発表 橋間 昭徳 氏

『Internal Displacement and Stress Fields due to a Moment Tensor in an
Elastic-Viscoelastic Layered Half-Space』
(弾性−粘弾性層構造媒質中のモーメント・テンソルによる内部の変位・応力場)

(2004年07月14日)

本研究では重力場の下にある弾性的表層とマックスウェル粘弾性的基盤層
から成る2層構造媒質中のモーメント・テンソルによって生ずる内部変形場
の一般的表現式を導出することに成功した.一般に,全ての内部力源は
モーメント・テンソルで記述できる.また,モーメント・テンソルは等方
爆発・開口亀裂・断層すべりの3つの独立な物理過程に一意的に分解する
ことが可能である.この内,断層すべりについては既に一般的表現式が
得られているので,本研究では開口亀裂と等方爆発の場合の変形場を新たに
導いたことになる.
まず,無限弾性媒質中のモーメント・テンソルによる変位場の直角座標系に
おける表現式にハンケル変換を施すことによって円柱座標系における表現式を
導出した.この表現式は弾性媒質の平衡方程式の特解にあたり,力源が直接
作り出す変位場である.弾性2層構造媒質の境界条件を満たす一般解は一般化
伝達行列の方法を用いて求めた.これによって弾性2層構造の内部変形場を
得たことになる.最後に線形粘弾性体の対応原理を適用し,弾性−粘弾性層
構造媒質の内部変形場を導出した.
以上のようにして導出した内部変形場の一般的表現式を用いて,等方膨張と
亀裂の開口と断層すべりの3種類の基本的内部力源に対する弾性−粘弾性層
構造媒質の変形応答を数値的に計算した.弾性−粘弾性層構造媒質の変形
応答は瞬間的には弾性2層構造媒質と変わらないが,基盤層が応力緩和した
後の変位場は水に浮かぶ弾性板としての変形応答を示す.さらに粘弾性問題に
おいて,長波長の上下変位を元の平衡状態に戻す重力の作用は本質的に重要で
ある.
つぎに,中央海嶺でのプレートの発散あるいは火成活動にともなうマグマの
貫入などを想定し,有限な拡がりをもつ開口亀裂型の力源の変形パターンに
ついて数値計算を行った.特に,亀裂が自由表面あるいは層境界面の近くまで
拡がっている場合と,亀裂が弾性表層を完全に分断してしまっている場合の
変形パターンの違いについて詳しく調べた.これらのモデルは発散型プレート
境界が陸上に現れているアイスランドのテクトニクスに応用可能である.