修士論文中間発表会
講演者:岡田真介
タイトル:
『スンダ海溝陸側斜面の海底変動地形とその発達過程』

(2004年10月06日)

要旨:
1. はじめに

 本研究では、活断層の挙動とそれに伴って生じる地形発達過程を明らかにすることを目的とする。
陸上に比べて、海底地形では流水によるランダムな地形侵食がほとんど無い。故に、海底の変動地形は、
陸上に比べて変形の過程を鮮明に保存している。そこで本研究では、沈み込みに起因する海底活断層に
着目し研究を行った。

 本研究では、スンダ海溝陸側斜面に発達する活断層を研究対象としている。世界的に見てM8.0を
越える巨大地震の大部分はプレート境界、特に沈み込み帯で発生している。よって沈み込みに起因する
海底活断層の構造や発達史を理解することは、巨大地震発生のメカニズムの理解や地震発生予測を
行う上でも重要である。

 スンダ海溝は、インド?オーストラリアプレートがユーラシアプレートの下に沈み込むアクティブな
プレート境界であり、斜め収束に伴う大きな右ずれ成分を持つ境界である(Sieh and Natawdjaja, 2000)。
この右ずれ成分は3.6〜4.9cm/yであり(McCaffrey, et al., 2000)、主にスマトラ断層とメンタワイ断層によって
解消されている。本研究地域は、スマトラ断層がスンダ海峡を通り海底へと屈曲し延長する部分であり、
スマトラ断層陸上域に比べてほとんど研究が進んでいない地域である。特に、スマトラ断層、外弧リッジに
存在するメンタワイ断層の2つは、スンダ海峡の拡大によって構造が複雑化されたために、ジャワ島沖に発達する
海底活断層とどのように連続するかは不明である (Schluter, H.U. et al, 2002)。

 本研究では、まず海底地形データと浅層の反射法地震探査データを用いて、研究地域に発達する変動地形を
マッピングする。次にディスロケーションモデルと単純な地形変化モデルを用いて、海底活断層地形の
シミュレーションを行い、海底活断層の挙動とそれに伴う地表変形過程を考察する。

2. 使用データと研究方法

《使用データ》
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海洋調査船「よこすか」によって行われた研究航海YK02-07とYK01-02において
得られた音響測深データ(Sea beam)とシングルチャンネルの反射法地震探査データを使用する。
対象地域はスンダ海峡の南東約200kmの地域に位置し、約170km×70kmの範囲である。

《方法》
YK02-07の音響測深データを使って詳細な海底地形図を作成し、得られた海底地形図から変動地形を判読する。
また、シングルチャンネルの反射法地震探査のデータ39測線分にフィルター処理を行い、浅層地下構造の解析を行う。
これらの地形判読と浅層地下構造解析から研究地域の構造発達を考察する。また、ディスロケーションモデル(Okada, 1992)と
地形変化モデルを使い、海底における活断層運動と堆積の相互作用によってできた構造のシミュレーションを行う。
そこでは、ソイルクリープと海底の一様な堆積を仮定した地形変化モデルに、断層モデルによって計算をされた変形を与え、
活断層の動きに伴う地形変化と表層の浅層地下構造をシミュレートする。

3. 現在までの結果

 YK02-07の音響測深データより詳細な海底地形図を作成した。また海底地形図を用いて、活断層地形を判読し、
活断層のマッピングを行った。シミュレーションにおいては、ディスロケーションモデルと拡散方程式を用いた
地形変化モデルを構築した。現在、シングルチャンネル反射法地震探査断面の解析中である。

4. 今後の予定

 現在行っているシングルチャンネル反射法地震探査断面の浅層地下構造解析をさらに進める。
ディスロケーションモデルによる断層地形と拡散方程式を用いた侵食を繰り返し、パラメタを変化させることにより、
海底における断層運動と浅層地下構造のシミュレーションを行う。