博士論文中間発表会

寺川寿子 氏

2005.06.29

タイトル: 「サンアンドレアス断層の絶対強度:応力蓄積シミュレーション及び
      地震のCMT解を用いた応力場の解析に基づく推定」

要旨
 サンアンドレアス断層(SAF)の絶対強度レベルはどの程度か?
このごく単純な問題は,30年以上もの間,学際的な論争の対象と
なってきたものであり,「地殻応力-熱 流量パラドックス」として
広く知られている.断層の絶対強度を知ることは,地震発生のメカニズムを
理解するための重要な課題であるが,一般に,大地震の発生領域で
断層の絶対強度を直接測定することは難しい.一方,地震の観測からは,
基本的に応力場の変化分に関する情報が得られるだけであり,
絶対応力レベルを推定することはやはり困難である.

 そこで,本研究では,南カリフォルニアのビックベンドセグメント
(BBS)周辺域を対象とし,変位の食い違い理論に基づく絶対応力場の
数値シミュレーションを行い,これと地震のCMT解を用いた新しい手法による
応力インバージョン解析を合体させて,SAFの絶対強度を推定することを
目指している.セミナーの前半では,BBS周辺域の応力蓄積過程を考察し,
絶対応力場の計算結果を示すと共に,絶対応力場の空間変動パターンと
SAFの絶対強度の関係を明らかにする.その空間変動パターンについて,
シミュレーションの結果と観測結果を比較することができれば,
SAFの絶対強度を推定することが可能となる.セミナーの後半では,
本研究で開発した応力インバージョン手法の定式化について説明し,
本手法をBBS周辺域に適用した解析結果と数値シミュレーションから
期待される結果を比較する.