博士論文中間発表会
橋間昭徳 氏
2005.07.06
タイトル: 「モーメント・テンソルによる内部変形場の定式化と
その背弧海盆のテクトニクスへの応用」
要旨
Backus and Mulcahy (1976a, b)によれば、地球内部起源の力
(内部力源)はモーメント・テンソルによって表現できる。
本研究では、弾性?粘弾性層構造媒質中のモーメント・テンソルによる
内部変形場の定式化を行った。具体的には、無限弾性媒質中の
モーメント・テンソルによる変位場の直角座標系における表現式に
ハンケル変換を施すことによって、円柱座標系における表現式を導出した。
この表現式は、弾性媒質の平衡方程式の特解にあたり、力源が
直接作り出す変形場である。
この特解と弾性2層構造媒質のモード解を重ね合わせて、
一般化伝達行列の方法で境界条件を満たすように係数を決めることにより、
弾性2層構造媒質の内部変形場の表現式が得られる。この弾性解に
線形粘弾性の対応原理を適用すれば、弾性?粘弾性層構造媒質中の
モーメント・テンソルによる内部変形場を得ることができる。
地球の表層は複数のプレートに覆われていて、それぞれ
相対運動をしている。島弧や、山脈などの大地形の形成や、地震など、
地球表層活動の現象の多くはプレート間の力学的相互作用に起因している。
そのプレート間の力学的相互作用は、プレート境界での
「変位の食い違い運動」によって合理的に表現できる。
今回のモーメント・テンソルによる内部変形場の定式化により、
収束・横ずれ・発散の全ての境界において、プレート間の力学的相互作用を
表現することが可能になった。
最後に、このプレート間相互作用の表現を背弧海盆の
テクトニクスに応用する。活動的な背弧の拡大が起きている地域は、
プレート境界の形状や伸張的なテクトニクスなど、プレート衝突帯とは
対照的な特徴を示している。そこで部分衝突の概念を拡張してこの地域に
適用して、背弧海盆周辺の変形場を見積もり観測値と比較する予定である。