博士論文中間発表会

朴秦浩 氏

2005.07.06

タイトル: 「朝鮮半島に分布する白亜紀から第三期の花崗岩類の
                  時間的・空間的な変化とその成因」

要旨

 アジア大陸の東縁に分布するPhanerozoic 花崗岩類は、
中国大陸から日本列島まで幅広く分布しており、
アジア大陸の成長に大きな役割を果たしたと考えられる。
本研究では、朝鮮半島に分布する白亜紀から第三期までの
花崗岩類について研究を行った。日本列島に分布する同時代の
花崗岩についても考察を行い、アジア大陸東縁の発達史を
明らかにすることが研究の大きな目標である。
 朝鮮半島は、Precambrian basementsをおおっている
堆積盆地の分布より、構造的に四つのprovinces(NWからSE
方向順でGyeonggi Massif、Ogcheon Belt、Yeongnam Massif
そして Gyeongsang Basin)に分けられる。韓国の白亜紀から
第三期の花崗岩は東西・南北それぞれ300kmの
広い地域にかけて分布し、Ogcheon BeltとGyeongsang Basinに
貫入している。
 これらの生成年代は、これまでRb-Sr 全岩年代や
K-Ar Biotiteなどのいろいろな方法によって測定され、
北西から南東に向かって若くなる傾向があったが、明瞭な
トレンドは見出されない。本研究では、すべての地域を
カバーするように体表的な26岩体を選んで、LA-ICP-MSを用いて
変性・火成作用および変質などから非常に強いZircon結晶の
U-Pb 年代測定を行った。その結果、花崗岩の生成年代が、
北西から南東に向かって、95Maから46Maまで約5千万年かけて
系統的に若くなることが分かった。韓国の花崗岩の
時間的・空間的な変化より、日本列島の同時代の
花崗岩についても考察を行い、韓国と日本の花崗岩の年代と
空間分布を比較した結果、韓国の花崗岩は海溝に向かって
若くなり、逆に日本は大陸の方に若くなる特徴が見られる。
 これらの時間・空間分布を説明するモデルはまだないが、
大陸側である韓国の花崗岩が海溝に向かって若くなること
については、大陸の下で提案されているマグマ生成機構のうち、
decompressionおよびcompressionによる大規模な溶融を
引き起こし得る「delamination」が可能であるようだ。
沈み込みを含む対流の数値計算結果より(Iwamori, unpublished)、
海溝から遠い場所で局所的な不安定成長のためにdelaminationが
起こり始め、このdelaminationすなわち下降流が、沈み込み帯の
半時計周りの大規模対流に乗って海溝側に移動してくる様子が
確認された。その移動の速度は50m.y.あたり200から
400kmであり、今回韓国で明らかとなった大規模な火成活動の
移動速度、スケールと同程度である。しかし、(1)別の目的で
作られたモデルであるため、境界条件が適切ではなく、温度が
低すぎて溶融が再現できていない、(2)天然の岩石からも、
どんな岩石がどのような条件(温度圧力、水の量など)
で溶融したかが分かっていない、ことから今後、温度場・溶融条件を
考慮しながら、この「移動するdelamination」が韓国の白亜紀に
起こった可能性を定量的に検討する必要がある。
韓国の白亜紀から第三期の花崗岩類の全岩化学組成では、
今回見られた時間的・空間的な変化に対応する大きな組成変化は
見られないが、地域的な分布による組成差が存在する。
それは結晶分別と部分溶融度の違いだけではなく、sourceの違い
もしくは地殻物質によるcontaminationも反映するようである。
今後、それぞれどのようなプロセスでできたか定量的に
説明する必要がある。