博士論文中間発表会
中村仁美 氏
2005.07.20
タイトル: 「Chemical composition of the mantle under Central Japan
with doublesubduction of the plates」
要旨
中部日本の火山は深発地震面(沈み込む太平洋プレートの上面)の深度が
約150kmの地点から300kmまでの範囲に位置する.
このような中部日本の背弧側に相当し,深発地震面の深度が300kmの地点にある
のが,両白山地(白山火山群)である.他の沈み込み帯と比べても300kmの深
発地震面に対応する火山群の存在は特異である.中部日本では,ユーラシアプレー
トに東南東方向から太平洋プレートが沈み込み,さらに南東方向からフィリピン
海プレートが太平洋プレートに覆いかぶさるように沈み込んでおり,フィリピン
海プレートにより太平洋プレートの脱水過程に干渉して引き起こされた熱影響の
結果,通常よりもはるかに冷たい温度場がうみだされていると考えられている.
我々は,特異的な場所での沈み込み帯のマグマティズムに制約を与える目的で,
ソースマントルの組成を見積もることによって,マントルウェッジでのマグマ生
成のモデルを提案する.
これまでの研究から,東北日本弧と中部日本弧の流体の寄与を含めたソースマン
トルの組成の違いが,液相濃集元素比から見積もる方法により
明らかになった(Nakamura,2004).
その結果,東北日本弧と比較した中部日本弧のソースマントルの元素濃度は,
Zr量を同じと仮定すると,Rbで2.2倍, Kで1.4倍, Yで0.3倍,
Nbで0.8倍となる.同様の計算モデルを中部日本の全ての火山に適応した.
その結果,推定されたソースマントルのY濃度は,およそ南から北,東から西に
向かって減少することが分かった.中部日本の同位体比と微量元素比には強い相
関がある.更に,trace element calculationを用いて火山毎の溶融度を見積もった.
一方,同位体比については,火山岩のNd同位体比は,同じ経度で比較した場合,
南から北に漸減する傾向がある(e.g., minimum value with 2 sigma 0.512959
± 0.0000142 in KurofujiVolcano ?0.512928 ± 0.0000100 in Azumaya Volcano
? 0.512851 ± 0.0000117 in Myoko Volcano).また,同じ緯度で比較すると,
背弧側に向かって減少する(e.g., minimum value with 2 sigma 0.512959 ± 0.0000142 in
Kurofuji Volcano ? 0.512786 *1 in Ontake Volcano ? 0.512473 ± 0.0000095
in Eboshiwashigatake Volcano).Sr同位体比はNdと逆相関である.更に,Zr/Y
と同位体比には明瞭な相関がある.これらの比の変化は,東西方向で大きく,
南北方向で小さい.さらにPb同位体比を用いた解析から,検出された地球化学的
な変化は太平洋プレートとフィリピン海プレートスラブ由来の流体の寄与度の違
いと溶融度の違いを合算したものと考えられる.*1 (Ujike and Stix.,2000)