井出 哲 氏(地球惑星科学専攻)
2005.11.09
タイトル: 「地震の複雑さのスケーリングを考える」
要旨
地震のマクロな震源パラメター(地震モーメント、断層サイズ、
地震波動エネルギー等)の間には、サイズの異なる地震の幾何学
的相似を示唆するスケーリング則が、ほぼ成り立っている。また
地震波形はM1でもM7でも顕著なサブイベントに分かれ、波形
インバージョンで断層のすべり分布を求めると複雑なパターンを
示す。地震や断層の複雑さも広いサイズ幅で相似的な性質を持つ
のであろう。
地震をフラクタル的な破壊エネルギー特性を持つ断層面上の破壊
伝播と考えて、3次元弾性媒質中の平面クラックの自発的成長を
シミュレートした。破壊エネルギーの極小点を人為的に破壊する
と、その運動は周囲の破壊エネルギーがやや大きい領域に進んで
いくが、たまたま周囲の破壊エネルギーが大きすぎると自然に止
まる。これは特徴的サイズを持たず、統計的に自己相似的な破壊
の成長モデルである。破壊伝播速度や地震波形上の初期破壊フェ
ーズは自然地震と同様なものが再現できる。このようなモデルは
地震の成長過程を考える上での重要なエンドメンバーとなる。