深畑 幸俊 氏(地球惑星科学専攻)

2005.11.30

タイトル:
「地形・重力異常・火山分布の空間的相関関係に基づく島弧-海溝系の成因論」

要旨:
世界には沈み込み帯と呼ばれる数多くのプレート収束境界があり、その形態や
応力状態はバラエティーに富んでいる。Uyeda(1984)は、チリ型、マリアナ型
という2つの端成分を挙げ、沈み込み帯を分類・理解しようと試みたが、その
後目立った進展はない。
 しかしその一方、沈み込み帯では、特色ある地震分布に加え、地形および重
力異常が海溝で低く島弧(陸弧)で高いという特徴が普遍的に見られる。さら
にまた、多くの沈み込み帯には火山が分布する。そこで、沈み込み帯の最も基
本的な特徴である地形・重力異常・火山分布の空間的相関関係に注目して、そ
の形態の整理を試みた。その結果、いくつかの例外を除き、地形の高まり(山
脈)と火山列とは非常に良い一致を示すこと、山脈が海溝に沿って2列ある場
合には、海溝寄りの山脈は重力異常と一致する一方、内帯側の山脈は火山列と
一致することが分かった。更に、山脈が一列しかない場合には、山脈・重力異
常の高まり・火山列の3者が良い一致を示す場合と、重力異常の高まりのみ海
溝側にずれる場合の二通りがある。以上の観察事実とこれまでに得られている
知見を基に、沈み込み帯の成因論を展開する。