池田 安隆 氏 (地球惑星科学専攻)

2006.03.01

タイトル:「島弧における歪みの蓄積・解放過程と超巨大地震:
               東北日本弧とアンダマンースンダ弧」

要旨:
 2004年スマトラ−アンダマン地震(Mw 9.1-9.3)は,1960年チリ地震
(Mw 9.5;震源域の長さ1000 km)や1964年のアラスカ地震(Mw 9.2;
震源域の長さ 850 km)と並ぶ観測史上最大規模の地震であり,破壊領
域の長さは1200 kmにも達した.この地震の震源域の内部では,19世紀
以降既にMw 7.0-7.9の地震が少なくとも4回起こっているため,今回の
ように巨大な地震が発生するとは全く予想されていなかった.しかしひ
るがえってみれば,1961年チリ地震の震源域でもマグニチュード7−8級
の地震が100−150年間隔で起こっている.2004年スマトラ−アンダマン
地震は,この様な巨大地震発生のメカニズムを解明するうえで極めて重
要な事例である.本報告では先ず,この地震に伴う地殻変動について,
現地調査の結果を交えて紹介する.
 千島ー日本海溝においても,この様な巨大地震が発生する可能性を既
に指摘した.東北日本弧では,測地学的データと変動地形学的データの
間に大きな不一致が存在するらしいことが従来から指摘されていたが,
近年の両分野におけるデータの質・量両面の向上に伴って,この不一致
の存在が益々明確になりつつある.本報告の後半では最近のデータを基
に,東北日本弧に於ける歪みの蓄積・解放の過程と巨大沈み込み型地震
(Mw 〜9)発生の可能性を議論する.