櫻庭 中 氏(地球惑星科学専攻) コアの対流 ― 線形不安定と乱流

2006年4月12日

地球のコアの対流について,2つの話題を提供する。

地球の磁場の存在は,地球内部での活発な対流運動(対流ダイナモ)を示唆す
る。一般に惑星の磁場は,その内部のダイナミクスに関する重要な情報源のひ
とつである。惑星内部にどのような流れが生じ,また(空間パターン,強度,
時間変動の性質など)どのような磁場が生じるか,という問題は,惑星科学に
おいてもっとも基本的な問題のひとつであろう。

導電性の物質が流動し,それによって誘導電流が流れるという対流ダイナモの
プロセスは,なかなか複雑である。その複雑さの一因は,コリオリ力,ローレ
ンツ力,浮力などの複数の外力が3次元的に作用する点にある。そこで一つ目
の話題として,やや古典的ではあるが,磁場がかけられた状態での回転流体球
の熱対流の発生条件(線形安定解析)の問題をとりあげる。この問題は,一様
な流体球のなかで,いかにセルフ・コンシステントな流れ場,電磁場が発生す
るかという洞察を与えるであろう。

こと地球について考えてみると,一見地磁気に関する情報は豊富のようである
か,実際はそれほどでもない。地磁気は液体金属コアの流れを反映しているが,
どのような流れが生じ,どのような電流が流れているかについての情報は,き
わめて限られている。二つ目の話題として,観測される地磁気の双極子モーメ
ントの時間変動から,コアの対流についてどのような情報を得ることができる
か,という問題をとりあげる。数値シミュレーションとの比較により,コアの
乱流状態についての情報が与えられる可能性がある。