片山郁夫 氏 (新領域PD)

「オリビン選択配向に対する水と温度の効果と沈み込み帯での地震波異方性」

2006年5月31日

上部マントルに観察される地震波異方性は弾性的に顕著な異方性をもつオリビンが
選択的に配向しているためと考えられている。鉱物がどのような向きに配向するかは
結晶中の最もすべり易い面と方向(スリップシステム)が決めており、従来の研究では
物理的条件(例えば、歪み速度や温度)がスリップシステムを決定していると考えられて
いた(Carter and AveLallemant, 1970)。
しかしながら、近年の唐戸研究室の成果は鉱物中に取り込まれる微量の水がオリビン
のスリップシステムに対し重要な影響を及ぼすことを報告している(Jung and Karato, 2001)。
これは地震波異方性からマントル中での流動方向や応力を推定するのみならず、水の
分布を推測することができることを意味している。

しかしながら、これまでの実験は高温条件(~1500K)に限られるため、水が重要な
振る舞いをしている沈み込み帯(~1000K)に応用するには温度依存性を調べる必要が
ある。本発表では、高圧変形実験により得られたオリビン格子選択配向に対する水と
温度の影響を報告し、東北日本など低温型沈み込み帯で観察される地震波異方性を
議論したい。