修士論文中間発表 西上原航氏

「三波川変成岩中のザクロ石の異方成長」

2006年10月11日

 高圧の変成作用をうけた岩石は,プレートの沈み込みに伴い形成されると考え
られる.その沈み込みのテクトニクスは,主要な変成鉱物のひとつであるザクロ
石の化学組成帯構造から推定でき,過去の沈み込み帯の連続的な温度・圧力経路
を,微分熱力学的手法(ギブス法)を用いて定量的に解析することが可能であ
る.そのため,数多くの研究で成果がだされてきている(例えば,Spear and
Selverstone, 1983; Spear, 1993; Inui and Toriumi, 2002).

 このようにザクロ石は沈み込み過程を記録していて,有用な鉱物である.ザク
ロ石の結晶系は立方晶系であり,理想形は{110}面の結晶成長面をもつ菱形一
二面体で,等方的な外形を有する.しかしながら,高変成度の三波川変成岩の泥
質片岩中には,しばしば偏平の外形をしたザクロ石がみつかる.これは,明らか
に理想的な外形とは異なる.偏平になる理由として,鳥海(2004)ではザクロ石の
異方的な成長があげられ,予察的に示されている.それによると,岩石の塑性変
形に伴ってザクロ石が異方成長するのならば,ザクロ石の非等方的な化学組成累
帯構造から沈み込み過程での歪速度(変形)履歴が決定される可能性があるとして
いる.これは,ザクロ石の化学組成累帯構造からギブス法を用いた解析により,
連続的かつ定量的な温度・圧力・変形(歪み速度)経路が同一試料で推定できる
ことを意味している.

 本研究では,三波川泥質片岩中のザクロ石(ザクロ石帯,曹長石−黒雲母帯)
を用いてその解析を行った.現段階では,観察及びEPMA分析から以下のことがわ
かった.ザクロ石の組成累帯構造は,コアからリムへ向かって連続的に変化して
いるため,沈み込み過程を記録していると考えられる.偏平な外形をしたザクロ
石のEPMA組成マッピングより,累帯構造のコア部分ではほぼ等方的に成長してい
るが,リムに向かうほど,つまり温度が高くなるほど異方的に成長していること
がわかる.これらのことから,沈み込みに伴う累進変成作用時に異方的に成長し
た可能性が高い.