修士論文中間発表  高橋亜夕氏

沈み込む太平洋プレート上で活動する火山―リソスフェア屈曲場での火山活動」

2006年10月25日

 日本海溝に沈みこむ太平洋プレートは、約130Maに形成された海洋地殻と後期白亜紀
に形成された海山からなり、これまで新しい火山活動はないと考えられてきた場所で
ある。しかし、1997年のかいこう第56潜航において、日本海溝海側斜面(39o23.2’N,
145o15.5’E)より、非常に若い玄武岩(5.95±0.31Ma Ar-Ar age)が採集された(Hiran
o et al., 2001)。
 音響探査によれば、日本海溝海側斜面の海底には海山群(かいこう海丘群)と溶岩フィ
ールドが広がっている。これらの海山は長径0.9-5km、比高50-400m、体積0.006-1.00
9km3で、単成火山の規模といえる。その配列は西北西―東南東方向で、太平洋プレー
トの運動方向に一致している。火山噴出物の年代 (4-8Ma)から、現在のプレート運動
(NNR-NUVEL1A)を逆算すると、火山活動は北海道海膨東側斜面の広い範囲(約400 km)
で起こったことがわかる。
 太平洋プレートは日本海溝に沈み込む手前で、弾性的屈曲によりアウターライズ地形
を形成し、その垂直変位は600-700mにおよぶ。本研究では、リソスフェアの屈曲にと
もなう最上部マントルでの流線の変化と、減圧融解の可能性について数値計算を行っ
た。組成としてペリドタイトを仮定し、さまざまな水の量にたいする相図はIwamori
(2004)を使用した。ドライの条件下では融解は起こらないが、水が0.06wt%存在する
ときに、深さ100km付近で初めて融解がおこる。水が0.10wt%存在すると、アウターラ
イズ東側斜面の広範囲にわたり、深さ86km以深で融解が進行する。これは、採集され
た岩石がガーネットペリドタイトの少量の部分融解で生じた(Hirano et al., 2001)
という分析とも整合的である。