小澤一仁 氏(地球惑星科学専攻)
「マントル物質から有益な情報を読み取れるか?」
2006年11月22日
マグマの主要な発生場である上部マントルは、プレート境界でのテクトニクス
によって持ち上げられ地表に露出する場合がある。このようなマントルのサン
プルは、時に水平距離で数百キロにおよび上部マントルにおけマグマ発生・
分離・輸送メカニズムを知る上で重要な手がかりを与えてくれると信じられ
てきた。しかし、我々が観察している上部マントルの全体像を反映している
わけではないし、直接サンプルであるとは言え、多くが過去のマントルであ
り、様々な融解・変成・変形を経験して地表に達した物質であることは厳然
たる事実である。こうした対象から有益な情報を引き出し、地球物理学的な
観測やモデリングとあわせて融解過程を理解するためには、明確な考え方・
戦略の下に研究を進めなくてはならない。その鍵となるのは、マントル物質
が持っている情報をその物質が経験した履歴として抽出することである。例
えば、固体として最終的に地表に露出したマントル物質から、融解過程を見
ようなどと思う場合には、これは必須であり、融解時はもとより融解後のマ
ントル物質の温度・圧力・物質輸送・変形履歴の解明なくしては、定量的一般
化によってマントルの融解過程の理解を深めることはできない。フォーラムで
は、こうした考えに沿ってこれまで演者が進めてきたマントル物質の研究を
紹介したい。