村上 雅紀 氏 (地球惑星科学専攻)
断層の年代測定 ―野島断層のFT年代測定―
2007年6月13日
我々が目にする断層はいったいいつ形成されたものなのでしょうか?
断層の年代を測定する方法はいくつかあります。その中でも放射年代に
よる温度履歴解析(熱年代学)は断層運動の際に生じる摩擦発熱を直接
捉え、摩擦熱が発生した時期すなわち断層運動の時期を推定できる可能
性があります。これまで、断層摩擦発熱によって生成したとされる
シュードタキライトを対象にして、放射年代学による温度履歴解析が行
われてきました(例えば、Ar/Ar法やRb-Sr法など)。しか
しながら、これらの方法ではシュードタキライトが生成される高温短時
間加熱条件下(例えば、1000℃5秒間)で年代値がリセットされ
たかどうかが不確かなため、得られた年代値が本当にシュードタキライ
トの生成時期を示すのかどうか疑問が残りました。そこで今回の固体
フォーラムでは、ジルコンフィッショントラック(FT)法における
シュードタキライト生成条件を再現した高温短時間加熱実験を御紹介い
たします。また、この加熱実験結果に基づき、断層の年代測定の一例と
して淡路島野島断層トレンチ調査で採取されたシュードタキライトのジ
ルコンFT年代分析も御紹介いたします。発表には地球化学的な内容が
含まれていますので、事前の知識がなくてもいいように熱年代学も解説
いたします。