松浦 充宏 氏 (地球惑星科学専攻)


プレート収束帯の変形と内部応力場

2007年9月26日

物体の変形・破壊・流動を引き起こすものは力である。従って,地震の発生か
ら造山運動まで,地球表層部の様々な活動現象を理解するためには,地殻の物
性構造に加え,絶対応力状態を知る必要がある。しかし,地震観測や測地測量
から地殻応力の変化は見積もれても,その絶対値を知ることは困難とされてき
た。我々の研究グループは,この問題に対して,データ解析と計算機シミュレ
ーションを融合させた新しいアプローチを提案している。地殻は大小無数の弱
面を含む弾性体であり,そのバルクな非弾性的力学特性は構成則に支配される
弱面の運動に強く依存する。地殻は,長期的に見れば,プレート境界での力学
的相互作用による応力蓄積とプレート内の弱面群の運動による応力解放がバラ
ンスした定応力状態にある。しかし,短期的には,プレート境界での固着-す
べりに伴う応力変化はプレート内の弱面群の運動に影響を及ぼし,逆に,プレ
ート内の弱面群の運動はプレート境界の応力状態を変化させる。今回のセミナ
ーでは,こうした基本的な考え方に立って,地殻の応力状態を推定するにはど
うすれば良いかを,実際のデータ解析例とシミュレーション結果に基づき紹介
する。