永井 秀憲 氏 (地球惑星科学専攻)
Forsterite-Jadeite系における固液共存微細構造の圧力依存性

2007年10月10日

地球内部にはマントル遷移層やコア−マントル境界などの境界領域や中央海嶺
下やマグマ溜りなどといった液体の割合が少ない固液共存系があると考えられて
いる。固液共存系の微細構造は系の力学的性質の変化や液体を通じた物質輸
送、固体と液体の相対運動による構造形成に影響を与える。そのため地球内部の
進化発展、観測のために固液共存系の微細構造を理解することは重要である。
微細構造を表すものとして、固体ー固体ー液体が接するところの面の角度である
二面角がある。二面角は固体ー固体、固体ー液体の界面エネルギーの比 によっ
て決まり、界面エネルギーは組成、温度圧力の影響を受けるが、主に組成の効果
により説明されている(Takei and Shimizu, 2003)。二面角に関するこれまでの
研究をまとめるとオリビンー珪酸塩メルト系では"無水"の場合に圧力の増加に
伴って二面角が大きくなっており、予想される組成効果とは逆の結 果となって
いる。本研究では、この矛盾を検討するために、圧力を変えてもかんらん石と共
存する液の組成が大きく変わらないforsterite-jadeite系につい て、1300 度
で、1atm,1GPa,2.5GPaと圧力を変えた実験を行った。その結果圧力に伴い二面角
の減少が見られた。二面角の推定は実験生成物の断面から測定 した見かけの二
面角の中央値を用いたが、これは結晶が等方的であることを前提としており
Forsteriteの界面エネルギーの異方性やそれに伴う組織の非理想性を考えると不
十分である。そこで、実験生成物から薄片をつくり界面方向を 決定することに
より真の二面角を個々のポイントで測定を進めている。これと EBSDを組み合わ
せることでForsteriteの方位による界面エネルギーの違いと真の二面角のばらつ
きを推定することができる。今回は、この結果と圧力変化において1atmと1GPaの
間を埋めるため100MPaのHIPによる実験を進めているの で、その途中経過につい
て話す。