松尾 俊彦 氏 (地球惑星科学専攻)
ダイヤモンドアンビルセル装置用c-BN高強度ガスケットの開発とその応用
2007年10月10日
ダイヤモンドアンビルセル装置(DAC)は,約 300GPaまでの高圧力発生を
可能としており,100GPaを超える高圧実験には欠かせない装置である.
そして,高圧実験で重要な役割を担っているのがガスケットである.
従来,DACには金属性のガスケットが使用されてきた.特にReは,
高ヤング率で加工硬化性が高いことから,ガスケット材の中で最も
使用頻度が高い材料である.しかし,そのReでさえ高圧下での試料室の
厚みはせいぜい二十数〜数μmである.そのためシグナルの弱い試料に
対し,DACを用いた高圧下での測定は困難である.この問題を解決する
ためには,高圧下で試料室をより大きく保持できる新高強度ガスケット
開発が求められる.高圧下で試料室の厚みを確保する利点としては,
@シグナルの弱い試料の測定が可能になること,A複雑な試料構成の
実現が可能となること,この二点が期待できる.
本研究では100GPaを越える高圧下で,試料室の厚みを確保するために
新高強度ガスケットの開発を目的とし,c-BNをガスケット材に採用した
こととガスケット構成を工夫することでReより高圧下で2〜3倍程度の
厚みを確保することに成功した.また,その有用性を実証するために,
応用としてSiO2ガラスのX回折実験を行い,Meade et al. (1992)の報告に
ある42GPaを超える77.2GPaまでの測定に成功している.