小澤 一仁 氏 (地球惑星科学専攻)
かんらん岩シュードタキライトは深部地震発生条件での 剪断加熱 不安定の証拠となるか?


2007年12月5日


脆性ー延性転移条件より深い 50km以深の沈み込みスラブ内で起きる地
震の有力なメカニズムの一つとして注目されている剪断加熱不安定(thermal
runaway instability; Karato et al., 2001; Kelemen and Hirth, 2007)の
直接的証拠であるとされるかんらん岩シュードタキライトには、気泡や急冷樹
枝状結晶を含んだガラスが残存しており、摩擦加熱によって全溶融に近い融解
が起きたと考えられている(Obata and Karato, 1995; Ansersen and
Austrheim, 2006)。ところが、ガラスが結晶化せずに残っていることや気泡
や樹枝状結晶の繊細な構造が保存されている事実は、これらのシュードタキラ
イトが、スラブ内で深部地震が起きている領域の推定温度800℃よりかなり低
温(低圧)で形成されことを示している。今回の固体フォーラムでは、この問
題を解く鍵を与えると思われる、Balmucciaかんらん岩体に見いだされた新し
いタイプのシュードタキライトについて紹介し、特にCr-Alスピネルに記録さ
れている情報に注目して、剪断加熱不安定の履歴について考察する。