山田 卓司 氏 (地球惑星科学専攻)
緊急地震速報と地震の初期破壊過程
-- 地震の最終規模
はいつ分かる?
2008年1月23日
2007年10月から、気象庁による緊急地震速報の一般
提供が始まりました。緊急地震速報は、震源に近い観測
点で地震波(P波)を観測すると、その観測波形から即座
に地震の最終規模および各地の地震動(震度)を予測し、
大きな震動が来る数秒から数十秒前に我々に予想震度を
公表するものです。この速報は、災害軽減に貢献するも
のと期待されています。
本発表では、この問題を震源物理の観点から考えて
みます。観測点で地震波形を観測してからどれほど迅速
に地震の最終規模を予測できるかどうかという問題は、
地震破壊のごく初期の段階で、大地震と小地震の違いが
見られるのかどうかという問題に密接に関連しています。
本発表では、はじめにこれまでの緊急地震速報研究
の歴史を簡単に概観し、その後、UrEDAS(ユレダス:JR
などで採用されている、世界初の実用的緊急地震速報シ
ステム)やElarmS(アメリカ、カリフォルニア州の緊急地
震速報システム)で採用されている「卓越周波数」という
パラメターを用いた緊急地震速報システムを紹介します。
最後に、この卓越周波数を用いたシステムの物理的背景
を、発表者の博士課程からの研究と絡めて調べます。
その結果、卓越周波数を用いて推定した地震の最終
規模には大きな誤差が含まれ得るが、最終規模推定とし
てはまずまずうまく機能していることが明らかになりま
した。しかしながら、このシステムの基礎となっている
「卓越周波数と地震の最終規模との線形関係」そのもの
は、必ずしも震源の物理過程を反映したものではなく、
この線形関係そのものを根拠として震源物理の議論をす
ることはできないということも同時に明らかになりまし
た。