固体地球科学大講座 概要

固体地球科学講座では、地殻、マントル、コアからなる固体地球の物理・化学状態と構造、様々な時間・空間スケールでの構造の形成と変化過程、それらに影響を与える地球表層、地殻、マントル、コア間での物理化学的相互作用を定量的かつ包括的に理解することを目指している。研究の対象は地球表層での地震・火山・地殻変動現象と地形形成進化過程、マントルの熱・物質循環と海洋地殻の形成・消滅および大陸地殻の形成・合体・分裂・消長過程、コアのダイナミクスと地球磁場の成因・変動メカニズム等である。このように多様かつ複雑な固体地球を理解するためには、連続体力学、破壊力学、地球力学、地形学、構造地質学、岩石学、地球化学、高圧物性物理学、電磁流体力学等を基礎とする、地震波トモグラフィー、地震発生物理学、数値シミュレーション、超高圧高温実験、グローバル観測データ解析、野外調査、岩石・鉱物分析、地球化学分析など、様々な研究手法が必要である。

幅広い視野で固体地球を共通の対象として捉え、こうした異なるアプローチを融合することで、固体地球の進化と変動を総合的に理解することをめざし、固体地球科学講座が目指すべき4つの中心課題を以下のように設定している。

地震科学

プレート運動に起因する準静的な応力蓄積、断層における高速すべりと 地震波の伝播、断層の余効すべりと強度回復、アセノスフェアの応力緩和に伴う応力 再分配など、一連の地震現象を統一的に解明し、時間・空間スケールの階層性を持つ 地震活動現象を複雑系の振る舞いとして捉え、その統計的性質を明らかにするとともに、 地震現象の予測可能性を評価する。

テクトニクス

プレート境界領域変動帯(沈み込み帯、大陸衝突帯)における地形形成と内部構造 変化をプレート境界領域での物理・化学的作用に起因する内的過程と表層環境に支配 される浸食・運搬・堆積等の外的過程の相互作用としてとらえ、島弧−海溝系の形成・ 変動、大陸衝突による造山運動と大規模地殻変形、背弧における海洋底拡大を、統一的 かつ定量的に解明する。

固体地球進化

地球内部物質の分化・構造形成、特に地殻とコアの形成と消長を引き起こしてきた地球 内部の熱エネルギー・物質循環のメカニズム、および表層環境‐地殻、地殻‐マントル、 マントル‐コアの熱・化学的相互作用のメカニズムを理解することで、全地球史にわたる 地殻・マントル・コアの熱・化学的進化を統一的かつ定量的に解明する。

地球内部ダイナミクス

全地球データの解析や大規模数値シミュレーション、最先端の室内実験などにより、 地球内部の状態と変動、特に、地殻、マントル、コア、各層の不均質性や層間の 各種相互作用(熱的、力学的、電磁気学的、物質科学的)についての理解を進め、 それらを融合することで、地球内部全体のダイナミクスを解明する。


mailto: www-admin@solid.eps.s.u-tokyo.ac.jp