地震発生論セミナー2011

概要

日時
毎週月曜16:30~
場所
理学部1号館739号室
テーマ
自己組織化臨界現象(夏学期)
間隙水圧と地震(冬学期)
内容

夏学期:自己組織化臨界(SOC)というのは系が時間発展していくと、温度などの外部パラメータによらず自発的に臨界状態におちついていくことである。 SOCを示すモデルとしては砂山モデルとバネブロックモデルが有名で、これらのモデルがシンプルだったこともあり90年代に地震のモデルとの関係が盛んに研究された。 本セミナーでも当時の論文を中心に読み進め、地震モデルを考えるときに基礎となる概念の理解を目的とする。

冬学期:間隙水圧が震源過程に与える影響については多くの研究者が様々な形でとりくんできたが、個々の研究者それぞれによって議論が展開されたままでまとまりきっていないのが実状である。 本セミナーでは後の研究に与える影響が大きかったと思われる論文を中心に読み進め、その中で基本的な論理体系や過去に展開された議論の流れを追う。 また、学期の後半には沈み込み帯における間隙水圧と地震活動との関係についても扱う。岩石の変成作用によって脱水された水がスロースリップや低周波地震、巨大地震に与える影響について議論する。

主催教員
井出 哲 (固体講座), 中谷正生 (地震研究所), 亀伸樹(地震研究所)
世話人
田村慎太朗 (固体講座), 横田裕輔 (地震研究所)

参考 : 2007年度, 2008年度, 2009年度, 2010年度

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ロードマップ

自己組織化臨界現象と地震
地震の複雑さ(レビュー)
砂山モデル
バネブロックモデル
間隙水圧と地震
間隙水圧と震源過程
間隙水圧と面外塑性変形
沈み込み帯の間隙水圧とスローイベント・巨大地震
間隙水と岩石の相図

ルール・方針

  • 全員, 論文は事前に読んでくる(理解できなくとも良い)
  • 発表者は, 前の週の終わりに10分程度の次回予告を行なう
  • 各回の担当者は初回に決定

日程表

夏学期
日付 回数 予定論文 担当 補足
04月11日 00 なし 田村 趣旨説明と担当決め
04月18日 01 Turcotte et al., 2007 小林&横田
04月25日 02 Turcotte et al., 2007 麻生 予告
05月02日 休み
05月09日 03 Bak et al., 1988
05月16日 04 Christensen and Olami, 1992 栗原 予告
05月23日 連合大会
5月30日 05 Burridge and Knopoff, 1967 浜橋&田村
06月06日 06 Carlson and Langer, 1989 日下部&横田 予告
06月13日 07 Rice, 1993 藤田
06月20日 08 Shaw, 1994 五十嵐&太田
06月27日 09 Rundle et al., 1999 伊藤&平野
07月04日 10 Rundle et al., 1999 田村
07月11日 11 予備日
07月18日 海の日

冬学期
日付 回数 予定論文 担当 補足
10月03日 00 なし 田村 趣旨説明と担当決め
10月10日 休み
10月17日 01 Kanamori and Heaton, 2000 伊藤
10月24日 02 Brodsky and Kanamori, 2001 日下部
10月31日 03 Andrews, 2002 藤田
11月07日 04 Rice, 2006 小林
11月14日 地震研修士中間発表
11月21日 05 Rice, 2006
11月28日 06 Viesca et al., 2008 五十嵐
12月05日 AGU
12月12日 07 Saffer and Tobin, 2011 麻生 予告
12月19日 08 Saffer and Tobin, 2011Kato et al., 2010 栗原
12月26日 冬期休業
01月02日 冬期休業
01月09日 冬期休業
01月16日 09 Hacker et al., 2003a 浜橋
01月23日 10 Kato and Yoshida, 2011Yoshida and Kato, 2011 矢部
01月30日 11 予備日

論文リスト

夏学期
意図 文献
01 地震の複雑さに関するレビュー
D. L. Turcotte, R. Shcherbakov, and J. B. Rundle (2007), 4.23 Complexity and Earthquakes, Treatise on Geophysics, pp. 675-700.
1回目は4.23.1節から4.23.2.6節までの約11ページ。重要な経験則としてGR則や修正大森則などが紹介されている。
02 地震の複雑さに関するレビュー
D. L. Turcotte, R. Shcherbakov, and J. B. Rundle (2007), 4.23 Complexity and Earthquakes, Treatise on Geophysics, pp. 675-700.
2回目は4.23.3節から4.23.5.3節までの約10ページ。自己組織化臨界(SOC)とそれに関連するモデルについて。
03 砂山モデル
P. Bak, C. Tang, and K. Wiesenfeld (1988), Self-organized criticality, Phys. Rev. A, 38, 364–374.
Bak et al., 1987と合わせてBakらによる砂山崩しのモデルはBTWモデルとして広く知られており、自発的に臨界状態に発展していく系を非常に単純なモデルによって示した。しかし、「砂山モデルが1/fノイズを示す」と主張している点などいくつかの間違いを含むことでも有名(参考)。
04 非保存系の砂山モデル
K. Christensen and Z. Olami (1992), Scaling, phase transitions, and nonuniversality in a self-organized critical cellular-automaton model, Phys. Rev. A, 46, 1829–1838.
Olami、Feder、and Christensen(1992)によるモデルはOFCモデルと呼ばれ、BTWモデルと同じく90年代に地震に関連して盛んに研究された。BTWモデルとの大きな違いは砂山が崩壊を起こすときに粒子数が保存されないという点である(BTWモデルではモデル領域の境界でおきる崩壊以外では粒子数が保存される)が、崩壊のたびに散逸する系でも崩壊のサイズ頻度分布はべき乗則になりSOCを示す。
05 バネブロックモデル(BKモデル)
R. Burridge and L. Knopoff (1967), Model and theoretical seismicity, Bull. Seismol. Soc. Am., 57, 341-371.
断層に沿った1次元弾性体のスティックスリップ運動によって地震を表現するというBKモデルのオリジナル論文。
06 BKモデルの数値計算
J. M. Carlson and J. S. Langer (1989), Mechanical model of an earthquake fault, Phys. Rev. A, 40, 6470–6484.
一次元のBKモデルにおけるバネブロックの挙動を数値計算によって詳細に調べた。初期状態で系は一様でニュートン方程式にしたがって運動するが、Velocity-Weakeningする摩擦則の持つ不安定性のためにブロックは時空間的に複雑な挙動をする。さらにブロックの運動規模と頻度の関係はGR則に非常に近いことも示された。
07 弾性体の離散化の問題
J. R. Rice (1993), Spatio-temporal complexity of slip on a fault, J. Geophys. Res., 98, 9885-9907.
BKモデルというのは離散化モデルであり、本来連続体力学で議論されるべき地震のモデルとの整合性を著しく欠いているという批判がついてまわる。Rice(1993)は離散化の間隔が臨界サイズh*に比べて大きすぎると系が複雑な挙動をするということをRSFを用いたstrike-slipの数値計算によって示した。
08 粘性のあるBKモデル
B. E. Shaw (1994), Complexity in a spatially uniform continuum fault model, Geophys. Res. Lett., 21, 1983-1986.
Rice(1993)で指摘された離散化の問題に対する解決策の一つ。十分連続体とみなせるほど細かく離散化されたモデルでも粘性を導入するとブロックが複雑な挙動をする。
09, 10 ポテンシャルとBKモデル
J. B. Rundle, W. Klein, and S. Gross (1999), Physical Basis for Statistical Patterns in Complex Earthquake Populations: Models, Predictions and Tests, Pure Appl. Geophys., 155, 575-607.
RSFに従うBKモデルの系の安定性をLyapunov functional potentialを使って解析。

連絡先

  • 世話人:田村慎太朗 (固体講座 D2) : tamura@eps.s, 横田裕輔 (地震研究所 D2) : yusuke@eri
  • ML管理:田村慎太朗 (固体講座 D2) : tamura@eps.s