マントルの最下部数100kmの領域(D”領域)はマントル対流の熱境界領域と考えられていて、構成物質のソリダスと地温勾配が近接していることから、化学分化が起こり温度や化学組成の3次元不均質が存在すると予想されています。特に沈み込み帯下のD”領域では、沈みこんだスラブと周囲のマントル物質が相互作用して、温度や物質の流動に擾乱を生じる可能性があるため、この領域の地震波速度構造を推定することは地球内部のダイナミクスを探る上で重要な手がかりとなります。
本論文では、代表的な沈み込み領域である北太平洋下のマントル最下部400 kmの構造を推定対象として詳細な構造推定を行いました。地震波のtransverse成分のうち、S・ScS及びその間に到達するフェーズを含むデータに、局所的3次元構造推定のための波形インバージョン法(Kawai et al. 2014, GJI)を適用して、北太平洋下のマントル最下部400 kmの3次元S波速度構造を推定しました。
その結果、(A) 核−マントル境界(CMB)から約200 km上の領域には水平方向に広がる高速度領域、(B) CMB直上には鉛直方向に50~100 kmの強い低速度領域、さらに(C) 低速度領域(B)から少なくとも鉛直方向に400 km続く低速度構造が推定されました。速度異常が温度異常のみに起因すると仮定すると、高速度(A)及び低速度(B)領域はそれぞれ沈み込んだスラブ及び、スラブのブランケット効果によってその下で発達した熱境界層領域と考えられます。そして、鉛直方向に連なる低速度構造(C)を、上昇「受動的プルーム」がスラブの沈み込みによってに発生したものと解釈しました。

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