安藤研究室 Tectonophysics Group

巨大地震発生過程の動力学的シミュレーション


巨大地震発生過程を,シミュレーションにより再現することは,現象を物理的に理解して,さらに将来の地震を予測するために重要です.われわれは,地震が起こった後に得られた観測データを用いた逆解析(インバージョン)ではなく,地震が起こる前に得られるデータを初期条件・境界条件とした順解析(フォワード,シミュレーション)によって,近年起こった巨大地震を再現する研究を,系統的に進めています.2016年M7.9, Kaikoura(ニュージーランド)地震では,多数の断層面が約200kmにわたって連鎖的に破壊されました.われわれは,地震前に得られていた広域応力場と断層形状のデータから,地震によって生じた断層滑りなどの大局的な特徴を再現することに成功しました.
詳細:Ando and Kaneko (2018)

巨大地震(元禄型関東地震)の再来間隔

房総半島南部千倉地域で稠密な地質・地形調査を行い元禄型関東地震(M8クラス)による隆起運動が, 過去約6300年で少なくとも5回,最短で500年の間隔で起こっていたことを発見しました. 元禄型関東地震の繰り返し間隔は,従来では平均約2300年間隔とされていましたが, 今回の調査でより短く,ばらつきが大きいという結果が得られたわけです. 国が実施する地震活動の長期評価で参照した地震履歴を更新し,将来の発生予測の見直しを迫る成果でもあります.
詳細:Komori et al. (2017)



時空間領域境界積分方程式法の高速解法の開発

通常,断層を数値実験する場合は境界を離散化します. その方が安定だし, 私たちが見たいのは断層と地表での波だからです. この手法が境界積分方程式法と呼ばれるものですが,波を記述するとなると非常に重い厄介なスキームでした(サイズの3乗で計算コストが爆発). これを解決するのが僕たちです[Ando et al. 2007; Ando 2016]. 最近では地震学の知見を持ち寄って応用数理の人たちと協力,動的境界法の最速アルゴリズム(コストスケーリングがサイズの1乗)を作りました. このアルゴリズムとスパコンを用いた大規模計算によって, 巨大地震の複数シナリオの検討が視野に入ってきました.
詳細:Ando (2016) Sato and Ando (submitted)


スロー地震の物理モデル構築

スロー地震は,断層の摩擦特性とその非一様な分布を考慮すれば物理的に上手く説明できることが解明されました.そこでは通常地震を起こすようなバリッと割れる脆性的なパッチが, ヌルヌル滑る(塑性流動する)背景領域の中に存在する, 不均質な断層構造を考えます. 一般に, 断層の浅部は脆性的で大地震を起こすのに対し, 深部は定常的に塑性流動します. その遷移領域にこのような不均質構造が存在すると考えるのです.
詳細:Ando et al. (2012)