JGR Solid Earth誌に新しい微動データ解析法の論文が出版されました
さまざまなスロー地震のうち、テクトニック微動と低周波地震は、普通の地震計で観測できる点で同じようなものです。複雑な信号が連続する微動は、より単純な低周波地震が何度も連続して発生したものと考えられます。単純な信号を重ねて複雑な信号を生み出すのは簡単です。では複雑な信号(微動)から、単純な信号(低周波地震)を抽出することはできるか?というのがこの研究のテーマです。単純な信号が得られれば、より高度な分析への道が開けます。抽出された単純な信号を経験的低周波地震eLFEと呼ぶことにします。
この研究ではeLFE抽出手法を確立し、有効性を例を用いて示しました。岡山県下で発生する微動に対しては、特に良いeLFEが抽出できました。この微動は、かなり潮汐に敏感で、干潮時に限って発生します。新しいeLFEを用いると、ノイズに埋もれていた微動を多数検出するので、これまで以上に潮汐依存性が明瞭になりました。またこの微動が27kmという、この地域の微動にしては極めて浅い場所で発生していることがわかりました。これは、西日本のプレート沈み込み様式を考えるうえで、新たな難しい謎です。
S. Ide, Empirical Low-Frequency Earthquakes Synthesized From Tectonic Tremor Records
論文URL: https://doi.org/10.1029/2021JB022498